Advantages
- 低い導入コスト:ユーザーは360度カメラで現場を撮影するだけ。大がかりな計測機材は不要で、撮影後の計器の認識や配管の抽出はAIが自動的に行う。
- 高精度な3次元位置認識:AIが対象物の3次元的な位置を正しく認識。その認識範囲の的中率は90%以上を実現。
- 現況調査の省力化:建築物のリフォーム・改修、工場の設備更新、プラントエンジニアリングなどで、現場における現況調査の省力化ニーズを直接解決。
Background and Technology
工場内の配管や計器類、ビルの温熱設備(ボイラー室など)では、経年劣化への対応や省エネルギー設備の導入に伴い、リフォーム・改修工事が定期的に行われている 。しかし、これら既存の現場では、過去の設計図面と現在の施工状況が異なっているケースが少なくない 。そのため、着工前に現場を目視で確認し、計器や配管の配置を再測定する作業に多大な時間と人的コストがかかることが大きな課題となっている。
こうした現況調査の省力化・自動化を実現する、以下の2つのAI技術をご紹介する。
技術1:計器やバルブなど設備を特定するAI技術。ユーザーは、360度カメラ等で撮影するだけで、AIが現場にある設備の3次元的な位置と総数を推定する。その推定精度は非常に高く(Key Data参照)、実用的な現場での実証例も取得している。
技術2:配管の位置や長さの計測技術。これも、360度カメラで撮影したデータをもとに、AIが配管の経路や長さを推定する。配管同士が交差したり隠れているような状態でも接続状態を推測し、ひと繋ぎであることを識別できる。また、配管に貼り付けられたラベルを読み取って、配管の種類も特定する。
これらの技術は、最先端の画像認知技術や数理最適化をベースに開発されており、以下のような手法が取り入れられている。
・YOLO系(You Only Look Once)やSegment Anything Model(SAM)の応用:Ultralytics 社やMeta社が開発した、画像内のあらゆる物体をほぼゼロショット(追加学習なし)で自動的に切り出せる最先端のAIモデル。設備や配管の抽出において、最適化する手法を独自開発した。
・データ拡張(Data Augmentation)の最適化:AIの学習に必要な画像データ(教師データ)を効果的に水増しして生成する手法。一般に、工場やボイラー室の絶対数(撮影できる現場データ)はそれほど多くなく、深層学習(ディープラーニング)の学習量としては不十分になりがち。この課題に対し、限られた実データから多様なバリエーションの画像を擬似的に作り出すことで、少ない現場データからでもAIの識別精度を大幅に向上させることに成功。
・Structure from Motion(SfM)技術の統合:複数の2次元画像(写真)から、物体の3次元的な立体形状や位置関係を計算・復元する技術。平面的な画像情報から、3次元空間上での正確な位置や構造の推定を可能にした。
Key Data
本技術は、実際の現場を想定した検証において、極めて高いパフォーマンスを達成している 。
【計器の位置と総数の推定】
企業から提供されたビルのボイラー室の360度カメラ画像データをもとにAIを学習・検証したところ、計器の検出において以下の精度を達成した 。
‐位置精度(平均mAP50):0.983 (※画像内での位置特定における極めて高い正確性を示す)
‐認識精度(F1スコア):0.98以上 (※見落としや誤検出がほとんどないことを示す)
【配管の位置と経路の推定】
既存の高性能AIモデル(SAM)に対し、配管の位置を高速かつ効率的に抽出するための「独自の指示(アテンション)」を開発した。AI単体では判別が難しい配管のつながり方や重なり方の判定も、独自のアルゴリズムによって自動化している。さらに、配管の名称情報を文字認識することで、種類の自動特定も可能にしている 。
Partnering Model
本技術は、工場・プラントやビル等における現況調査のデジタル化(デジタルツイン)を推進する上で、以下の2つの事業形態(活用パターン)を想定しています。
‐本技術を自社で直接利用するケース:貴社が施工・管理する工場やビルのリフォーム工事において、現況調査を自動化・省力化する社内システムとしてお使いいただけます。
‐本技術をベースに新規事業を展開するケース:本AI技術(設備特定・配管計測ソフト)を貴社の計測デバイスや施工管理アプリ、3D空間解析ソフトウェア等に組み込み、現況調査を効率化する新たなソリューションとしてパッケージ化し、提供・販売する形態をご相談できます。
大学との連携体制については、目的に応じて以下のように柔軟に対応可能です。
■技術の提供(ライセンス契約)
お打ち合わせにて個別のニーズを伺った上で、必要なご契約(特許・著作物ライセンス契約)のもと、大学が保有する本AIソフトウェア技術を提供します。
■共同研究・事業化支援
本技術を元にした計測技術の事業化(自社製品への組み込み等)を検討するに当たり、さらなる実用化・カスタマイズに向けた追加の技術開発が必要な場合には、大学側からの支援が可能です。本格的な共同開発の際には、「共同研究契約」への発展も含めて随時相談を承ります。
Principal Investigator
有馬 澄佳 講師(筑波大学 システム情報系 社会工学域)
専門分野:ビッグデータ解析、数理最適化
研究概要:多数の企業と協力し、AI技術や数理モデル最適化を産業界の実用的な課題に適用・解決する研究を行っている。本技術も、実現場での実証例や企業提供データに基づく、高い実用性を強みとしている。
Patents and Publications
特願2024-201781