Advantages
■ 簡便かつ低コスト:汎用原料の水溶液を蒸発させるプロセスのみで調製が可能
■ 世界最高水準の光学性能:ランタノイドに由来する大きい非対称性因子(0.023-0.026)と、理論限界に近い光ルミネッセンス量子収率(PLQY)96% を達成
■ 容易な品質管理と選別:光学的に等方性結晶のため、汎用の偏光顕微鏡でキラリティ(右旋性・左旋性)を容易に判別可能
Background & Technology
光学デバイス分野では、高輝度かつ高品質な円偏光を得るために、高効率な円偏光発光材料が切望されている。しかし、従来の無機材料はキラリティの制御が極めて難しく、高価な有機キラル分子を用いたキラル転写や複雑な配位子設計が不可欠であった。
本研究者は、アキラルな構成ユニットからキラル結晶を得る「キラル無機結晶」に着目し、自然分晶条件の探索を長年続けてきた。自然分晶は左右結晶に自発的に結晶化するもので、一般に発生確率が 10% 以下と低い現象であるが、本研究者らは過去には CsCuCl3 の分晶制御に成功するなど知見を蓄積しており、今回新たに理想的な光学特性を持つ K3[Eu2(NO3)9] の自然分晶条件を発見した。
本発明技術は、原料の水溶液を蒸発させるのみという極めて簡便なプロセスによりキラル無機結晶構造を自発的に形成させるものである。光学的に等方な立方晶系であるため、複屈折の影響を受けずに汎用の偏光顕微鏡下で結晶のキラリティを容易に判別・選別できる。完全に無機分子のみのバルク結晶としては世界初の円偏光発光報告であり、ランタノイドに由来する大きい非対称性因子(0.023-0.026)と、理論限界に近い量子収率(96%)を実現した。
Key Data
● 合成した K3[Eu2(NO3)9] の単結晶粉末に対し、室温下かつ励起波長 400 nm の条件で円偏光発光(CPL)スペクトルを測定した結果、波長 592 nm において、最大 |glum| = 0.023-0.026 という高い発光非対称係数を記録した。
● K3[Eu2(NO3)9] の光ルミネッセンス量子収率(PLQY)を絶対 PLQY 分光計を用い励起波長 400 nm の条件において測定したところ、96% であった。
● 開発の次段階として、テルビウム(緑色)など他ランタノイドへの展開が進行中であり、また今後、光学分割技術を生かして発光材料以外の無機キラル結晶の応用も期待できる。
Expectations
本発明技術は高効率な円偏光発光材料として、光データ処理、3次元ディスプレイ、セキュリティ印刷などの用途での活用が期待されます。
熊本大学では、本発明のライセンス導入による実用化・共同開発していただける企業様を探しています。熊本大学との秘密保持契約の締結による未公開データの開示や、発明者との面談も可能ですので、お気軽にお問い合わせください。
Principal Investigator
猪股 雄介 助教
熊本大学 大学院先端科学研究部(工学系)
Patents and Publications
Patent:
- PCT出願済み(未公開)
Publications:
1. Inomata Y. et al., "Solvent and Achiral Crystalline Phase-Induced Chiral Resolution of CsCuCl3." Cryst. Growth Des. (2026) 26, 401–407.
2. Inomata Y. and Kida T., "Circularly Polarized Luminescence in Chiral Potassium Europium Nitrate." JACS (2026) 148, 33−38.