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改変型ACE2受容体を用いたSARS-CoV-2ウイルスのデコイ製剤

変異株への耐性を有する高親和性改変型ACE2の構築に成功、野生型と比較し結合力が2桁向上し、KP.3株も中和可能

Advantages

■ 圧倒的な変異耐性:
 ウイルスの侵入経路を模倣するため、JN.1やKP.3株でも中和能を失わず、耐性株も出現させない
■ 利便性と経済性の両立:
 粉末吸入による家庭での自己投与が可能。静脈投与よりはるかに少ない用量で劇的な薬効を示す
■ 高い安全性と安定性:
 S-S結合による酵素不活化で血圧変動等の副作用を防ぎ、かつ常温での長期保管と流通が可能

Background & Technology

SARS-CoV-2ウイルスは次々と新しい亜系統へ進化し、既存の中和抗体やワクチンによる免疫を回避している。これに対し、ウイルスの宿主細胞への結合起点であるACE2受容体を模倣し、デコイとして用いる手法が知られている。本研究者らは、独自の指向性進化技術により、野生型ACE2よりも高感度にウイルスと結合し、抗体に匹敵する結合能を有する改変型ACE2を開発した。
さらに本技術は、本来ACE2が持つ酵素活性を独自の構造固定技術によって封じ込め、従来のACE2デコイ療法で懸念されていた全身的な血圧調整への影響を排除し、医薬品としての高い安全性を確保した。また、投与形態は静脈投与に加え、吸入に適し携帯性の高いドライパウダー型を開発しており、医療機関での投薬のみならず家庭での早期治療をも可能にする。

Data

前臨床試験完了 。霊長類(カニクイザル)における有効性と安全性を実証済み 。吸入用ドライパウダー製剤の最適化(ロイシン/トレハロース処方)も完了済み。

● 指向性進化(Higuchiら、2021):
 293T細胞上でランダム変異させたACE2ライブラリを発現させ、光活性化セルソーティングを用いてスパイク受容体結合ドメインへの結合能が高い細胞を選別・継代したところ、変異体3N39は野生型の約100倍の親和性が確認された。
● 酵素活性不活化の確認(Higuchiら、2021):
 ACE2の活性部位にジスルフィド結合を導入することにより、改変型ACE2の変性温度を10℃以上向上させ、かつ酵素活性を完全に遮ったことを確認した。
● 耐性変異株の誘発試験(Higuchiら、2021):
 抗体(H4株)または改変型ACE2(3N39v2)存在下で、ウイルスを15代連続で継代させたところ、抗体薬では4代で耐性株が出現したが、改変型ACE2では15代を経ても中和感受性が維持され、逃避変異が出にくいことが証明された。
● マウス/ハムスター治療試験(Ikemuraら、2022):
 オミクロン株に感染させたハムスターに改変型ACE2(3N39v4)を腹腔内投与し、5日後の肺内ウイルス量と炎症因子の発現が有意に抑制されることを確認した 。また、ヒトACE2を発現するマウスを用いた実験では、感染後の静脈内投与によって、オミクロン株による致死的な感染からの生存率が劇的に改善されることを示した。
● カニクイザル治療モデル試験(Uranoら、2023):
 デルタ株に感染したカニクイザルに改変型ACE2(3N39v4-Fc)を投与(静脈50 mg/kg, エアロゾル吸入1 mg/kg)したところ、吸入投与は静脈投与の1/50の低用量でも、肺内のウイルス増殖を抑え、肺炎(CT画像上の不透明度)が改善した。
● 中和活性評価(Itoら、2025):
擬似型レンチウイルスを用いて改変型ACE2(3N39v4-Fc)のBA.2.86亜型(JN.1、KP.2、KP.3等)に対する中和活性を調査したところ、中和活性を維持することが確認された
● 添加剤・噴霧乾燥の最適化、エアロゾル性能評価(Itoら、2025):
トレハロースやロイシンなどの添加剤の配合比率を変え、SFD(噴霧凍結乾燥)により粉末化し、カスケードインパクターを用いて粉末(3N39v4-Fc)の粒径分布を測定した。その結果、タンパク質の凝集を最小限に抑え、溶解性を維持する最適組成(T4/L4処方)を決定し、粉末が高い出力効率(約80%)を持ち、気管から肺の末端(肺胞)まで到達可能なサイズであることを確認した。
● 長期保存安定性試験(Itoら、2025):
40℃、75%湿度の過酷条件下で6ヶ月間粉末を保存したところ、6ヶ月後も中和活性や粉末の分散性が変化せず、非冷蔵(コールドチェーン不要)での流通が可能であることを示した。
● マウス粉末吸入試験(Itoら、2025):
MA10株感染マウスに粉末化した改変型ACE2(3N39v4-Fc)を気管内投与したところ、感染24時間後の単回投与で、肺内のウイルス増殖と肺炎病理を劇的に抑制し、KP.3等の最新株にも有効であることを実証した。
● ヒトiPS細胞由来心筋細胞の安全性試験(Itoら、2025):
ACE2は心血管系において重要な役割を果たしているため、粉末製剤の改変型ACE2(3N39v4-Fc)の心毒性をヒト人工多能性幹細胞由来心筋細胞(hiPS-CM)で評価したところ、心筋の電位変化(不整脈リスク)や収縮力・拍動率に影響を与えないことを確認した。

Principal Investigator

高木 淳一 (大阪大学 蛋白質研究所 教授)

Patents & Publications

Patent:
特許7756367号 (大阪大学からライセンス可能)

Publications:
- Higuchi Y. et al., Nat. Commun. (2021) 12, 3802.
[DOI] https://doi.org/10.1038/s41467-021-24013-y
- Ikemura N. et al., Sci. Transl. Med. (2022) 14, eabn7737.
[DOI] https://doi.org/10.1126/scitranslmed.abn7737
- Arimori T. et al., Trends. Pharmacol. Sci. (2022) 43, 838-851.
[DOI] https://doi.org/10.1016/j.tips.2022.06.011
- Urano E. et al., Sci. Transl. Med. (2023) 15, eadi2623.
[DOI] https://doi.org/10.1126/scitranslmed.adi2623
- Ito T. et al., Mol. Ther. Methods Clin. Dev. (2025) 33, 101459.
[DOI] https://doi.org/10.1016/j.omtm.2025.101459

Expectations

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プロジェクト番号:jt-03845