Advantages
■ NO採血・NOストレス: 運動を中断して採血することなくOBLAをリアルタイムかつ連続的にモニタリング。持続可能な限界速度・パワーを正確に把握可能。
■ 高額な検査設備が不要: 数百万規模の呼気ガス分析装置を使うことなく、日々のトレーニング効果(持久力向上)を定量的に追跡。
■ 全運動種目に対応: アーティファクト(呼吸の影響)を受けにくい解析手法のため、ランニングや自転車だけでなく水中運動などあらゆる種目に応用可能。
Background and Technology
持久系アスリートにとって、乳酸が急激に蓄積し始める強度(血中乳酸濃度4 mmol/L 、OBLA)は、パフォーマンスを規定する最重要指標である。しかし、この正確な測定には、運動中の侵襲的な採血や、大型の呼気ガス分析装置が必要であり、トレーニング現場での常時モニタリングは困難であった。
本来、運動強度の増大は自律神経のバランスに顕著に反映され、負荷が高まるほど心拍を上昇させる「交感神経活動」が亢進する。この生理学的変化をリアルタイムに捉えることができれば、非侵襲的な運動強度評価が可能となる。 これまで、その簡易測定法として心拍変動解析が試みられてきたが、交感神経活動を直接表す指標が存在しないため、一般的に低周波成分(LF)と高周波成分(HF)の比(LF/HF)が代用されてきた。ところが、LF/HFは呼吸や姿勢の影響を受けやすく、交感神経活動を必ずしも正しく反映しないという限界が指摘されていた。
本発明者は、心拍数(HR)とLFの比率である独自指標「HR/LF」に着目。強度が上がるとこの指標が2段階の立ち上がりを示し、その「第2の立ち上がり(変曲点)」が血中乳酸濃度4 mmol/L(OBLA)の地点と完全に同期することを発見した。これは、交感神経活動が圧受容器反射による抑制を振り切って急増する生理学的ポイントを的確に捉えているためである。心拍データのみでOBLAの特定が可能となり、計測コストを従来の1/100〜1/1,000程度まで劇的に削減できる。この特定されたOBLAポイントから乳酸域値あるいは強度最高酸素摂取量を高精度に推定可能である。将来的にウェアラブルデバイスへ実装することで、地上・水中を問わずあらゆるフィールドでの活用が期待される。
Data
- 29名を対象とした運動負荷試験において、HR/LFが示す変曲点負荷量(175±27 W)は、実測されたOBLA負荷量(176±33 W)と統計的に有意に一致した。
- 同試験において、HR/LFの変曲点から算出した酸素摂取量は、持久力のゴールドスタンダードである最高酸素摂取量と強い正の相関(r=0.836)を示した。
Expectations
福岡大学では本アルゴリズムを搭載したモバイルアプリケーションの開発や、既存のスマートウォッチ・スポーツデバイスへの実装を検討いただけるパートナー企業を募集しています。
現在は心電波形を用いた精度検証が完了しており、今後は光学式脈波センサーへの適用拡大や、特定の競技種目に特化したフィールドテストを共同で進めていきたいと考えています。
福岡大学との秘密保持契約の締結による未公開データの開示や、発明者との面談も可能ですのでお気軽にお問い合わせください。
Principal Investigator
上原 吉就 教授 (福岡大学 スポーツ科学部(運動生理学))
Patents and Publications
- PCT出願済(未公開)