Advantages
◼ 作用機序に基づく新規治療薬: 内側オリーブ蝸牛(MOC)システムを介した蝸牛保護とリボンシナプス保存
という独自の治療経路を確立
◼ 既存候補薬の活用: 疼痛薬として第 II 相試験実績のある SR-57227A を利用でき、開発リスクを低減可能
◼ 広範な適応疾患: 音響外傷から加齢性難聴、語音弁別能低下まで、幅広い症状をカバー
Background and Technology
感音難聴は、加齢や騒音暴露(イヤホン難聴等)によって内耳の有毛細胞やシナプスが損傷することで発症し、国民の10人に1人が発症する身近な疾患である。生活の質(QOL)を著しく悪化させるが、現状はステロイド剤等による対症療法が主であり、根本的な治療薬が存在しないという深刻な問題がある。
本研究ではこの問題の解決を目指し、加齢性難聴や音響外傷、雑音下での語音弁別能低下等の諸症状に対し、進行防止や改善を可能にする治療・予防薬候補を見出した。本研究者は内耳の保護を司る内側オリーブ蝸牛(Medial Olivocochlear: MOC)フィードバックシステムに着目し、このMOCニューロンに5-HT3A受容体が発現し、この5-HT3A受容体がMOCシステムを駆動させる「スイッチ」として機能することを解明した。さらに、その5-HT3A受容体アゴニストがMOCニューロンを活性化することでこのスイッチを入れ、強大音によるダメージから蝸牛を保護できることを実証した。特に、難聴の重要な要因であるリボンシナプスの喪失を劇的に抑制する効果が確認されており、また近年の研究ではMOC系の活性化や強化は、騒音性難聴ばかりでなく加齢性難聴や語音弁別能低下に対しても効果があることがわかってきていることから、これらの難聴の進行防止や症状改善において革新的な成果が期待される。
5-HT3A受容体アゴニストとしては、抗うつ薬として第II相試験実績のあるSR-57227Aを利用でき、迅速かつ低コストな開発が可能である。
Data
・ 受容体欠損による障害の増悪: 5-HT3A受容体欠損(ノックアウト)マウスに対して強大音を暴露したところ、野生型マウスと比較してMOC機能が低下し、聴覚障害とリボンシナプス喪失が著しく悪化した(図A)。図中Salは生理食塩水、AgはSR-57227、Antは5-HT3A受容体阻害剤
・ リボンシナプスの保護と聴力低下の軽減: 野生型マウスに対して強大音暴露の30分前に5-HT3受容体アゴニスト(SR-57227A)を投与したところ、強大音暴露による内有毛細胞と蝸牛神経の接合部であるリボンシナプスの喪失が大幅に抑制され(図A)、聴力低下(DPOAE値の減少およびABR閾値の増大)が有意に軽減された(図BおよびC)。
Expectations
大阪大学では本発明の難聴治療薬の開発を担っていただける企業を募集しています。
本発明の化合物である SR-57227A は、大阪大学の特許ライセンスのもと、製薬企業により疼痛治療薬として開発が進められています。当該企業との間で前臨床・臨床試験データを共有することにより、開発期間およびコストの削減が期待されます。
研究者とのノンコンフィデンシャルでの面談も可能です。
Principal Investigator
島田 昌一 教授 (大阪大学 大学院医学系研究科)
Patents and Publications
・ WO2023/190707 (日本へ移行済)
・ Ohata K, et al., Cochlear protection against noise exposure requires serotonin type 3A receptor via the medial olivocochlear system. FASEB J. 2021 May;35(5):e21486. [doi]: 10.1096/fj.202002383R. PMID: 33811700.