Advantages
(1)新規標的による選択的な作用:ネッタイシマカの脱皮ホルモン生合成に関与する酵素Noboを標的とする新しい作用機序により、非標的昆虫への影響を抑えつつ、蚊に対して効果を発揮する。
(2)薬剤抵抗性と既存剤との併用への適応:ピレスロイド系殺虫剤とは異なる化学構造と作用機序を有しており、薬剤抵抗性蚊への対策や既存剤との使い分け・併用による対応が可能である。
(3)スクリーニング展開の柔軟性:Nobo阻害活性に基づくスループット性の高いスクリーニング系を確立しており、関連化合物の探索やリード最適化が進めやすい体制が整っている。
Technology Overview & Background
デング熱やジカ熱などのウイルス感染症は、ネッタイシマカによって媒介され、全世界で年間約70万人の死亡者を出しており、重要な公衆衛生上の課題となっている。これらの感染症対策として蚊の駆除が重要であるが、ピレスロイド系をはじめとする既存殺虫剤に対する抵抗性を有する蚊の増加が報告されており、効果的な防除が困難になりつつある。また、殺虫剤を環境中に散布する際には、蚊以外の昆虫への影響も考慮する必要がある。
このような背景のもと、筑波大学の研究チームは、ネッタイシマカに対して特異的に作用する新たな殺虫剤「R22」を見出した。R22は、イソキノリン化合物(2-(5-nitro-2-pyridinyl)-1,2,3,4-tetrahydroisoquinoline)を有効成分とし、脱皮ホルモン生合成に関与する酵素「Noppera-bo(Nobo)」の阻害を通じて、蚊の幼虫の成長を抑制・駆除するものである。R22は、既存のピレスロイド系殺虫剤とは異なる作用機序および化学構造を有しており、薬剤抵抗性の回避が期待される。また、哺乳動物に対する毒性も低く、安全性の観点からも有用性が高いと考えられる。
Data
(1)ネッタイシマカに対する殺虫活性:R22のLD₅₀は0.83 ppmと、高い殺虫効果を示した。
(2)酵素阻害活性:R22のNoboに対するIC₅₀は0.70 μMであり、既存の阻害剤エストラジオール(IC₅₀ = 2.33 μM)と比較して約30倍の活性を示した。
Expectations
筑波大学では、本発明にご興味のある農薬・殺虫剤の開発をされている企業様を探しています。本発明を基にした共同開発を希望します。本研究で得られたR22からの構造最適化に取り組むような共同開発も歓迎します。また、有効なハイスループットのスクリーニング系も確立しており、このスクリーニング系を利用した新規化合物の開発も可能です。研究者との直接のご面談によるお打合せも可能です。
Principal Investigator
丹羽 隆介教授 (筑波大学 生存ダイナミクス研究センター)
Patents and Publications
特許出願中