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さらなる安定をもたらす、動吸振器の改良機構

地震や機械振動を抑える「動吸振器」の振動抑制能力をさらに向上する、モータフリー・センサフリーな新技術

Advantages

- 振動抑制力の向上:吸振器が動くタイミングを対象物の共振周波数近傍に絞ることで、従来の動吸振器では避けられなかった新たな共振の発生を防ぎ、制振性能を高める。
- 電源・センサー不要:対象物の振動が共振周波数の近傍にあるときだけ、自動的に吸振器が駆動する。周波数の検出や吸振器の駆動・停止に電源・モーター・センサーを一切使わない。
- 運用・保守コストを削減:機構が単純なため、油圧式など大掛かりなシステムに比べて保守の手間とコストを抑えられる。
- 幅広い用途に対応:ビル、橋梁、産業機械、船舶、ヘリコプター、ドローンなど、規模や分野を問わず組み込める。

Background and Technology

地震による建物・橋梁の揺れ、波浪による船舶の横揺れ、ヘリコプターのブレード振動など、建築や工業製品にとって振動の抑制は長年の課題である。対策には動吸振器(振り子式やマスダンパ等)やフィンスタビライザーなど多数の吸振技術が研究開発されており、一定の成果を挙げてきた。しかし、現在でも解決が難しい現象がある。「共振現象」だ。対象物が固有の周波数(共振周波数)の振動を受けると激しく揺れるこの現象は、放置すれば甚大な損傷を起こし、安全性の問題に直結する。

共振の解決が難しい原因は、吸振技術自体が引き起こす副作用にある。たとえば建物に動吸振器を取り付けると、建物の共振周波数ω0近傍の振動は抑えられる(図の青矢印)。しかし、建物と吸振器を合わせた系が実はω1・ω2という二つの共振点を持っており、そこでの振動が増大する副作用が起こる(図の黒点線)。この副作用を抑えようと吸振器の動作帯域を広げれば、今度はω0における制振効果そのものが弱まる(図の赤点線)。効くタイミングを絞ればω1・ω2が育ち、絞らなければω0の効きが鈍る。これが、共振対策の長年のジレンマだ。

答えは、吸振器が動くタイミングを絞ることにある。つまり、吸振器が建物の共振点ω0でだけ駆動すれば副作用が起こらない。本技術は、これをパッシブな「ラッチ機構」で実現する。対象物(建物や装置)に組み込まれた吸振器の質量部(ダンパ部分)を、磁石を介して間接的に固定しておく。対象物の振動が共振周波数ω0に近づくと、磁石が非線形バネとして働き、質量部の固定を自動的に解除して吸振器を動かす。振動がω0から離れると、磁石は再び質量部を固定する。

その結果、吸振器はω0近傍でだけ動作し、従来技術で生じていたω1・ω2の共振が起こらない。振動の影響が最も大きい共振のタイミングにだけ吸振器が働くため、対象物の共振を効果的に抑制できる(図の赤実線)。

このラッチ機構は、磁石を使ったバネ(磁気バネ)を使っており、このバネの特性をうまく調整することで、建物の共振点ω0でラッチが外れる仕組みだ。つまり、ラッチ機構は特別なセンサもなく、パッシブに振動周波数を “検知” し、吸振器の駆動を制御する。また、ラッチ機構が吸振器の質量部を固定・解放する機構には、磁気バネを使っているため、モーターなどの駆動系やその電源などが不要である。

Key Data

数値シミュレーションで本技術のコンセプトを確認済みである。建物の共振状態を模擬した場合では、ラッチの磁気バネが非線形挙動を示し、吸振器の質量部を自動的に開放、固定すること、そして、共振点近傍でのみ動作する吸振器によって振動を強力に抑制できることを確認した。

Expectation

本技術は、ビルの制振・耐震改修、橋梁、造船・海運、洋上風力発電、工作機械などの産業機械、ヘリコプターやドローンといった航空機まで、振動やその共振が問題となる幅広い分野に適用できます。特に、電源工事や頻繁な保守、複雑な制御を避けたい対象では、パッシブに動作する特性がより高い効果を発揮すると期待しています。筑波大学では、本技術にご興味のある企業様を募集しています。特許・ノウハウのライセンスを受ければ、すぐにご活用いただけます。貴社製品への適用可能性の検討や、特定製品向けの詳細設計についてご相談があれば、共同研究でも対応いたします。

Principal Investigator

藪野 浩司 教授(筑波大学 システム情報系)

Patents and Publications

・特許出願済み(未公開)
・参考情報:藪野先生の最近の研究報告(本技術の説明ではありません)
C. Zhang and H. Yabuno, SICE Festival with Annual Conference (SICE FES), 27 August 2024. Engineering, Physics, 2024
Bibcode: sice.conf...77Z

プロジェクト番号:da-05504