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敗血症治療/予防に資するタンパク質製剤(VWA5A)

パイロトーシスに伴い放出される炎症抑制性DAMPであるVWA5Aを補充し、好中球の過剰浸潤による臓器障害を抑える。

Advantages

- 新規作用メカニズム:既存の「阻害剤」とは異なる、「保護因子の補充」という独自コンセプト。
- 重症感染症リスクの回避:サイトカイン産生を抑制しないため、従来の阻害剤のような免疫抑制による病原体排除能の低下が起こりにくい。

Background and Technology

敗血症は世界的な主要死因の一つであり、2017年には世界で約4,890万件の症例と約1,100万人の敗血症関連死亡が推計されている。日本においても敗血症性ショックの院内死亡率は依然として30%を超えており、医療現場に大きな課題となっている。現在、敗血症の治療は抗菌薬投与や人工呼吸管理などの支持療法が中心であり、宿主の免疫応答そのものを治療標的とする薬剤は確立していない。過剰免疫反応を抑える薬剤開発は多数試みられてきたが、承認に至った例はなく、巨大なアンメットメディカルニーズが残っている。
免疫細胞がパイロトーシスを起こすことでDAMPs(Damage-Associated Molecular Patterns)が細胞外へ放出され、これに続く好中球の臓器への過剰浸潤が臓器障害の重要なプロセスとして知られている。このような背景から、炎症促進性DAMPsの研究が盛んに行われている。
本技術の有効成分VWA5Aは、パイロトーシスに伴い放出されることが新たに見出されたDAMPであり、炎症を誘導するのではなく、むしろ炎症を抑制する機能を有する点が特徴である。VWA5Aは血管内皮細胞表面のグリコカリックス層を保護し、感染臓器への好中球浸潤を抑制する一方で、サイトカインの産生には影響を与えない。これにより、これまでの抗炎症薬が抱えていた病原体排除機能を損なうという弱点を克服し得る新たな治療コンセプトとなる。

Key Data

・ VWA5A欠損マウスはLPS腹腔投与によるエンドトキシンショック誘導時に生存率が有意に低下し、肺をはじめとする主要臓器において好中球の過剰浸潤と重篤な組織障害を起こす(図2A,B)。
・ 野生型マウスのLPS誘導肺炎モデルにおいて、マウスおよびヒトのリコンビナントVWA5Aの静脈内投与は、肺への好中球浸潤とアルブミン漏出(血管透過性亢進)を有意に抑制する(図2C,D)。rm、rhはマウス/ヒトリコンビナントを示す。Δ2はVWF_Aドメイン欠失変異体、Δ4はC末端領域欠失変異体を示す。
・ In vitro解析により、VWA5AはマクロファージのTNFやIL-6などの炎症性サイトカイン産生を抑制せず、好中球の血管内皮細胞への接着を阻害することを確認した(図2E)。

Expectations

大阪大学では、VWA5A製剤開発を共に推進いただける製薬企業・バイオ医薬品企業を募集している。活性領域の知見を基盤とした低分子化・最適化(最小活性単位の同定、製剤最適化)に関する共同研究も歓迎する。VWA5A欠損(ノックアウト)マウスやVWA5A抗体について、敗血症治療薬のスクリーニングおよび研究開発ツールとして提供することも可能である。

Principal Investigator

齊藤 達哉 教授(大阪大学 大学院薬学研究科 生体応答制御学分野)

Patents and Publications

特許出願中(未公開)

プロジェクト番号:kj-05562