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中枢移行性を飛躍的に高めるトルバプタンのケイ素類縁体

環構造に含まれる炭素をケイ素に置換する「シリコン・スイッチ」により、薬物動態プロファイルを大きく変化させた新規中員環ケイ素化合物

Advantages

- 中枢移行性の飛躍的向上:トルバプタンケイ素類縁体をマウスに静脈投与した結果、炭素類縁体に比べて脳中濃度が約2倍に上昇し、血液脳関門透過性の著しい改善を確認
- 中員環ベンゾアザシラサイクルの簡便な構築法の確立:従来は合成困難であった7員環・8員環ベンゾアザシラサイクル骨格について、効率的な合成方法を新たに見出した

Technology Overview and Background

バソプレシンV1a受容体は、末梢では利尿薬の標的として知られる一方、脳内にも広く発現し、統合失調症、自閉スペクトラム症、うつ病、不安関連疾患など多様な中枢神経系疾患との関連が報告されている。近年、V1a受容体拮抗薬の自閉スペクトラム症における有効性を示唆する臨床試験結果も報告されており、中枢に作用するV1a拮抗薬への期待は高まっている。しかし、既存のバソプレシン受容体拮抗薬の多くは血液脳関門(BBB)を十分に通過できず、中枢標的薬としての応用には限界があった。この課題を解決するため、本発明者らは代表的なV1a/V2受容体拮抗薬であるトルバプタンの中員環構造に着目し、その一部をケイ素(Si)に置換することで物性と中枢移行性の最適化を図る新規デザイン戦略を構築した。一方で、窒素をヘテロ原子として含む中員環ケイ素化合物の報告例は極めて限られており、V1a受容体拮抗薬のみならず、中枢疾患を標的とした低分子創薬全般に応用可能な、新たな中員環シラサイクル構築法の開発が求められていた。
今回、本発明者らは触媒を用いた閉環メタセシス反応により、7員環および8員環のベンゾアザシラサイクル骨格を効率的に構築する新規手法を確立し、中員環構造のメチレン部位をジメチルケイ素(SiMe₂)に置換したトルバプタンのケイ素類縁体の創製に成功した。得られた化合物では、脂溶性(logD)の上昇とともに、マウスにおける脳中濃度が炭素アナログの約2倍に達することを確認している。さらに、V1a受容体に対する阻害活性も保持されており、薬効を損なうことなく中枢移行性を向上させた点が特徴である。こうしたシリコン・スイッチによる物性制御は、CNS標的低分子医薬のリード最適化戦略として、他標的への横展開も期待される。

Data

- 新規に合成したトルバプタンのケイ素類縁体について、バソプレシンV1a受容体阻害活性を評価した結果、IC₅₀=86.5 nMを示し、ケイ素導入後も高い阻害活性が維持されていることが明らかとなった(右図、2b)。
- トルバプタンのケイ素類縁体をマウスに単回静脈投与(10 mg/kg)したところ、脂溶性(logD)の向上に伴い、投与40分後の脳中濃度/血漿中濃度比が対応する炭素類縁体の約2倍に上昇し、BBB透過性の顕著な改善が確認された。

Patent(s)

特許出願済み(未公開)

Principal Investigator and Academic Institution

有澤 光弘 教授 (大阪大学大学院 薬学研究科) 

Expectations

大阪大学では、本技術を基盤とした治療薬開発に関し、以下のような形での協業・ライセンス導入をご検討いただける製薬企業様を募集しております。
・本ケイ素類縁体および関連化合物を出発点としたリード最適化・前臨床開発
・他標的へのシリコン・スイッチ戦略の横展開(共同研究等)
ご関心をお持ちいただけましたら、まずはオンラインミーティングや技術説明会の場を設定し、詳細データのご紹介および貴社ニーズとの適合性について意見交換させていただきます。お気軽にお問合せください。

プロジェクト番号:tt-05226